照心洗心録

安岡正篤、中村天風などから学んだことをまとめています。

10.宇宙の視点

「本当の世界は想像よりもはるかに小さい」

フリードリヒ・ニーチェ

 

心や体がただの道具であることを忘れて、それらに主導権を譲ってしまうと、怒りや体の痛みなどにとらわれて、正常な判断ができなくなってしまいます。

心と体をうまくコントロールするために、自分の本能が霊魂であることを忘れないようにしましょう。

人形遣いが糸と人形を見るように、客観的に自分の心と体を観察していれば、冷静さを失わずに済みます。

宇宙の視点から自分を観察するつもりで、自分を客観的にとらえてみましょう。

心に雑念が浮かんでいると、意識があちこちへと飛んでいってしまいます。

その状態では、心と体がバラバラになってしまっています。

馬の手綱を御者が手放してしまえば、馬は勝手に走り出し、暴走してしまうかもしれません。

雑念が浮かんできたら、すぐにそれを消して、心に主導権を譲らないようにしましょう。

人形遣いが糸や人形と一体になるように、私たちも心と体を統一してうまく使いましょう。

 

心と体を観察するときに気をつけることは、どちらか一方に気を取られないことです。

人形にばかりに気をとられていると、糸の動きを把握できなくなくなるし、逆に糸ばかりに注意を向けていると、人形の動きが不自然になってしまいます。

人形遣いは、人形だけでなく糸の動きも把握しておかなくてはなりません。

 

慣れない場所を運転するとき、カーナビを見ながら運転しますよね。

そのとき、カーナビに気を取られて前を見ていないと、事故を起こしてしまいます。

だからといって、カーナビを見ずに前ばかり見ていても、道に迷ってしまいます。

カーナビも前も交互に見ながら運転すれば、迷うことも事故を起こすこともなく自動車を走らせることができます。

普段生活しているときも、カーナビを見ながら運転するときのように、自分の心に気を配りながら、現実の世界に対処していくことが大切です。

 

体は目に見えるし、痛みなどの感覚を感じるので、心に比べて体を客観的にみることは容易です。

しかし心は目では見えないし、怒りや後悔などにとらわれると、冷静さが失われているので、心を客観的にみることは難しいかもしれません。

だから、心と体をうまくコントロールするためには、まず心を客観的にみることが重要です。

心を客観的にみていれば、感情に振り回されることがなくなります。

 

心が何かにとらわれていると感じたら、人形劇を思い出して、人形遣いの視点になってみてください。

糸を見るように、客観的に自分の心をみてみましょう。

心が感じていることを第三者の視点で考えて、絡まりそうになった糸をうまくほどきましょう。

 

怒りや悲しみ、不安といった消極的な感情は、実際に体の細胞を壊していきます。

消極的な感情を持ち続けていると、ストレスホルモンが分泌されて体の細胞を傷つけてしまうのです。

また、怒りは炎症反応を促進したり、血圧を上げたりします。

怒りによって脳卒中が起こり、命の危険に関わることもあるのです。

自分で自分を壊していくほど愚かなことはないので、心をきちんとコントロールするようにしましょう。

 

困難に直面して苦しい思いをしているときは、霊魂が心に振り回されています。

苦しいと思っているのは、霊魂ではなく心なのです。

心が苦しいと思っているから苦しいのであって、心が苦しいと思わなければ苦しくないのです。

当たり前のことのようですが、すべては心一つの置きどころなのです。

心が苦しみにとらわれて、暴走列車のように走り出す前に、何とか冷静さを取り戻しましょう。

馬が暴れ出したら、騎手が馬を制するのは当然のことです。

 

他人になんと思われようと、自分が自分をどう思おうと、自分の本質は決して変わることがありません。

自分だと思っているものは心であり、それを判断しているのも心なのです。

心は時とともに変わっていきます。

だから、他人の目も、自分の目も気にする必要はありません。

そんな不確かなものに、人生を左右される必要はありません。

霊魂は何があっても、決して変わることがない存在なのです。