照心洗心録

安岡正篤、中村天風などから学んだことをまとめています。

21. 万物の理

「一理に達すれば万法に通ず」
宮本武蔵五輪書

 

この世の万物は、目に見えない粒子が集まってできていて、その目に見えない粒子は一つの大きなエネルギーから生まれました。

だから、万物は同じ材料でつくられていて、共通の法則を持っています。

人間の体もその大きなエネルギーから生まれていていて、その心はエネルギーの動き自体になります。

私たちが何かを考えているとき、目に見えないエネルギーが動いているのです。

 

万物が同じ法則を持っているということは、何か一つのことを突き詰めれば、それを他のことに応用できるということです。

だから、自分が興味を持ったものを突き詰めれば、万物の理をうかがい知ることができます。

「好きこそものの上手なれ」ということわざがあるように、好奇心や情熱が一番の原動力となるので、興味を持ったものには、どんどん挑戦していきましょう。

そこから自分の中の世界を広げていけます。

 

私の趣味は音楽なのですが、音楽で学んだことは他のことにも役立っています。

例えば、作曲は執筆に応用できます。
作曲するときは、まず大まかにメロディーを作り、曲の構成や展開を考えて、デモ音源を録ります。

そして、スタジオでその曲を演奏しながら、手を加えていき、曲を仕上げていきます。

あらかた曲ができあがったら、ボーカルや楽器を録音して、その音を調節したり加工したり、納得がいくまで手を加えていきます。

細かいことにこだわりだしたら、切りがないので、ある程度のところで完成とします。


執筆は作曲の手順と似ていて、まずは思いつくままに文章を書いていきます。

次に文章の構成や展開を考え、下書きを完成させます。

そして、下書きをもとに文章を書いていき、作品を仕上げていきます。

作品ができあがったら、文章が読みやすくなるように修正を加えていき、納得できたところで完成となります。


ここでは作曲と執筆の共通性について話しましたが、万物は同じ法則を持っているので、違う角度から考えれば、一つのことは万物に当てはまるはずです。

スポーツを営業活動に役立てることも、テレビゲームを会社経営に役立てることもできます。

物事の核となるものを掴めば、他のことにいくらでも応用が利くのです。


人は必ず誰かの影響を受けています。

芸術家はこれまでの芸術家に影響を受けているだろうし、科学者はこれまでの科学者に影響を受けているでしょう。

なので、自分が興味を持った人のルーツを辿っていけば、自分の中の世界をさらに広げていくことができます。

そして、誰かのルーツを辿っているうちに、自分が本当に好きなものがわかってくると思います。

そうすれば、自分の個性を知ることができるので、今度はその個性を伸ばしていきましょう。

好奇心や情熱が尽きないかぎり、人はどこまでも成長していくことができます。

 

宇宙に果てがないように、人の心の世界にも果てがありません。

自分が学んだことや経験したことを結びつけて、世界を広げていきましょう。

点は線となり、線は平面となり、平面は立体となります。

すると、心の中で対立し合うもの同士がアウフヘーベンを起こして、一つ高い次元のものが生まれるかもしれません。

それは、宇宙における進化と同じ法則で起こります。

積極的な精神を持っていれば、心は宇宙のようにどこまでも進歩向上を続けていきます。


宇宙について考えることができる生物は、人類だけです。

他の動物は、目に見える物体のことしか考えられません。

もし、人間の心が宇宙よりも小さかったら、人間は宇宙について考えることはできないはずです。

だから人間の心の中には、宇宙を入れることができるのです。

人間の心は、限りなくゼロに近い粒子の動きであり、その世界は無限大なのです。


宇宙の態度は常に積極的です。

植物が太陽に向かって伸びていくように、宇宙は進化と向上を続けていきます。

だから、人間も宇宙と同じ心を持っていれば、どんなときも向上していけるはずです。

宇宙の心は真、善、美で、嘘をつかず、差別せず平等で、調和がとれた心です。

人間が真善美の心を持って宇宙霊と同調すれば、宇宙の創造の力を使うことができます。

その力によって、人類は一昔前では考えられないほど、さまざまなものを発明して、文明を発達させました。

そのようにして、人類は進歩を続けてきたのです。

消極的になって、自分に与えられた力を使わなければ、宝の持ち腐れになります。

 

信念や理想を持って生きないと、本能心によって、人間はすぐに堕落していきます。

でも、信念や理想を持ち続けるのは容易ではありません。

堕落しないためには、この世界の理を学んで、土台となる心をしっかりと作ることが重要です。

しかし、学校で学ぶような職業的な教育だけではその土台はできないので、各々が自分で学んでいく必要があります。

 

歴史を振り返ってみると、人類は何度も同じことを繰り返していることがわかります。

人は集団を作り、階級や制度を作り、国を作ります。

そして、権力を手に入れたものは傲慢になり、自分の地位を守ることを考えます。
国の中枢にいる人物が保身に走ると、国は退廃していきます。

すると、現体制に不満を持つ人々が反乱を起こして、季節が冬から春に変わるように、古い国が壊されて、新しい国が作られます。

このように、人類の歴史は四季のように、成長する時期、慢心する時期、堕落する時期、再生する時期を繰り返しているのです。

人間とは、権力を持つと堕落してしまう生き物なのです。

だから、見識がある人は高い地位に就くことを嫌いました。

安岡正篤も、中村天風も、頭山満も、周りに勧められても政治家にはなりませんでした。

秦の始皇帝も、漢の高祖劉邦も、天下統一を果たした豊臣秀吉も、この世を去るときは英雄と呼べるような状態ではありませんでした。

 

人類は同じことを繰り返して、精神面は進歩していないようですが、物質面は着実に進歩を遂げています。

素手で戦っていたのが、刀が使われるようになり、今ではミサイルや爆弾が使われるようになりました。

自分の手を汚すことなく、ボタン一つで大量の人間を殺すことができるようになったのです。
そして、文明の発達と共に、自然破壊も進行しています。

宇宙開発やインターネット、先進医療、遺伝子工学など、数十年前には想像もできなかった世界が、スピードを緩めることなく広がり続けています。

数十年後、地球は一体どうなっているのでしょうか。


今現在求められていることは、科学を発展させることではなく、地球の未来について考えることです。

地球が滅びれば、当然人類も滅びます。

仮に人類が、他の惑星に移住できたとしても、また同じことを繰り返すだけでしょう。
自分たちがしてきたことを振り返る暇もないほど、猛スピードで、文明は発展を続けています。

文明が発展するにつれて、構築されていったシステムが、私たちの常識を歪めているのです。

 

今、地球と人類は大きな岐路に立たされています。
「人類が地球を救う」と自主的に考えて、行動することが求められています。
手遅れになる前に、もう一度地球の未来について考えてみましょう。