照心洗心録

安岡正篤、中村天風などから学んだことをまとめています。

13. 人類の使命

「とにかく人間というものは、栄えようと思ったならば、まず何よりも根に返らなければいけない」

安岡正篤

 

植物が成長するためには、大まかに分けると二種類の力が必要になります。

枝葉を伸ばして花や果実をつける分化発展の力と、大地に根を張って幹を太くする統一含蓄の力です。

この原理は万物にあてはまるのですが、現代は文明や都市をみればわかるように、分化発展の力が過剰になっていて、その一方で統一含蓄の力が不足しています。

植物は根や幹がしっかり育つ前に、苗が徒長してしまうと、健康に育たなくなってしまいます。

徒長とは、枝や茎が必要以上に間延びしてしまうことを意味します。

建築物は土台が頑丈でないと、もし地震が起きれば、すぐに倒壊してしまいますよね。

まず重要なのは、土台となる根幹を強くすることなのです。

 

文明が発展すれば、その分地球の資源が消費されてしまうので、自然環境が汚染されていきます。

生活が便利になる一方で、その代償に自然が破壊されてしまうのです。

人類にとって根幹になるのは地球なので、科学の発展を中止してでも、自然に立ち返るべき時が来ています。

 

これまで人類以外に、地球環境を破壊したり、文明を築いた生物は他にいません。

なぜ人類は他の生物と違い、特別な能力を得ることができたのでしょうか。

その原因は、人類が何かに特化せず、専門化しなかったことにあります。

専門化すると、多様性を失ってしまい、可能性が狭まってしまいます。

人間が最も可能性を秘めているのは生まれたばかりの時です。

年を取るうちに、さまざまな選択を重ねることで、可能性が狭まっていきます。

また年齢を重ねると、肉体的な機能が落ちていき、さらに精神的な自由も失われていきます。

 

人類以外の生物について考えてみましょう。
エビやカニなどの甲殻類は、身を守るために固い殻を手に入れましたが、その外骨格のせいで成長が妨げられてしまいました。

鳥類は空を飛ぶことができますが、空を飛ぶために両腕が塞がれるので、細かい作業を行うことができません。

人類は外骨格を持たないし、空を飛べるわけでもありません。

もし人類が他の肉食獣と素手で戦うことになったら、決して生物として強い方ではないでしょう。
しかし、人類は最後まで専門化しなかったので、あらゆる可能性が残され、結果的に高い知能を獲得することができました。

そしてその知能を使うことで、人類は文明を発達させ、地球上における生物の頂点に立つことができたのです。

 

人類は特別な能力を獲得したことで、地球上のリーダー的な存在となることができました。

しかし現在、人類は地球のリーダーとしての責任を果たせていません。

人類の文明が発展しても、自然破壊が進むことで地球環境を脅かしてしまっては意味がありません。

科学の力を扱う人類には、弱い生物を守っていく義務があります。

人類は地球の一部なので、地球環境を守らなければ、本当の意味での人類の発展はあり得ないのです。

 

形ある物はいずれ壊れてしまいます。

それは、地球も例外ではないでしょう。

だからといって、それは地球の未来について考えることを放棄する理由にはなりません。
人間は生まれた時から、死ぬことが決まっていますが、それでも人生をより良くしようと、誰もが努力します。
むしろ、死ぬとわかっているからこそ、人は有意義に生きようと思うのです。

だから、私たちは地球の未来についても、自分のことと同じように考えなくてはいけません。

 

一人の人が亡くなっても、その人が生きていた事実は消えないので、周りの人に何かが残ります。

人は死んでも、想いまでが消えるわけではないのです。

強い想いは、他の人の心の中で生き続け、世代を超えて繋がっていきます。

同じように、もし地球が壊れたとしても、地球が宇宙に存在していた事実は消えないので、宇宙にその影響は残り続けるのです。

 

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安岡正篤「運命を創る」