「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化する者である」
人類が誕生する以前に、地球には長い歴史があり、地球が誕生する以前にも、宇宙には途方もなく長い歴史がありました。
宇宙が誕生する以前にも、さらに長い歴史があるのかもしれません。
真空の中でエネルギーがゆらぎ、そのエネルギーが急速に膨張して、宇宙は誕生しました。
そしてその後、宇宙は多種多様なものを創造し、それを育んでいます。
創造と化育を合わせて造化といいます。
化育とは形を変え育てることです。
生物の進化は、ある特性を持った個体が持たない固体よりも多くの子孫を残すことによって、徐々に発生します。
進化は遺伝子の違いによって発生するので、個体ではなく個体群で起こります。
一匹だけが強くなっても進化とは呼べないのです。
進化が起こる要因には、自然淘汰、生存競争、適者生存があります。
食物などの資源には限りがあるので、環境に適応できる生物だけが生き残ります。
進化は、何か特別なことが起こって生じるのではなく、自然界で自然に発生します。
厳しい環境で生き残るために、生物は進化するのです。
進化が起こる条件の一つに、多様性があります。
多様性があると、矛盾や対立が生じて緊張状態になり、それを乗り越えるために進化が起こるのです。
多様性のない単調な環境では、進化は起こりません。
人間も挑戦をして、失敗することで、何かを学び成長していくので、張りがない単調な生活では、堕落してしまいます。
ストレスのない環境で育った動物は、生命力が育たずに早死してしまうそうです。
地球に最初に誕生した生物は、海の中にいる単細胞生物でした。
細胞一つの存在である細菌やアメーバは、 自分で分裂して増えることができるので、ある意味では寿命という概念はありません。
寿命が無いといっても、死なないわけではなく、生存できる環境が揃わなかったり、他の生物に捕食されれば死んでしまいます。
また、寿命が無いというと、不老不死のように感じますが、表現を変えれば、変化や成長がないということなのです。
変化がなく、ただ生きているのは、死んでいるのとあまり変わらないかもしれません。
生物は環境の変化に適応していく過程で、性という概念を獲得し、有性生殖を行うようになりました。
しかし、その代償に生物は寿命を持つことになったのです。
有性生殖を獲得したことで、二つの個体の異なる遺伝情報を組み合わせることができるようになったので、生物に多様性が生まれました。
そのおかげで、生物の進化が発生しやすくなったのです。
もし寿命がなければ、多様性が生まれなかったので、生物はここまで進化することができなかったでしょう。
そうならば、生物は絶滅していたかもしれません。
現在も単調な生物が生きているのは、生物が多様性を持っているおかげかもしれません。
環境の変化に適応するために、生物は寿命を獲得したのです。
人間は死を恐れ、死について悩みます。
ですが、死を悩んだところで何も変わらないし、恐怖は増していくばかりです。
死を悩む前に、まずは生についてしっかり考えなくてはいけません。
寿命は、生物が環境の変化に適応するために獲得したのであり、死は生きるために手に入れたものなのです。
だから生について真剣に考えずに、死の意味がわかることはありません。
死があるから、生物は進化できたのです。
死を恐れるあまり、生がおろそかになってしまっては本末転倒になります。
本当に恐れるべきことは、進歩向上を止めてしまうことです。
死は恐れるためではなく、進化するために存在することを忘れてはいけません。
生物は環境に適応するために性と寿命を獲得し、そのおかけで多様な個体が生まれ、進化していくことができました。
原核生物が核を持つ真核生物になり、一個の細胞だけでできている単細胞生物が多細胞生物となり、足に節がある節足動物が生まれ、無脊椎動物が脊椎動物となり、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類が生まれ、進化の末に人類が誕生しました。
植物については、海中の藻類がコケ類となって陸上に進出し、シダ植物が生まれ、胞子植物が種子植物となって、裸子植物や被子植物が生まれました。
実際はこのように単純に進化したわけではありませんが、宇宙の造化によって、生物は進化し続けてきたのです。
この宇宙の万物は、進化と向上していくために、生まれてきたといえます。
だから、人類の生きる意味や目的も、宇宙と共に進化と向上を続けることにあります。
限りある生命を有効に使って、宇宙の造化に加わっていきましょう。
私たち生物は、原始の生命から万世一系で繋がっており、人間の体の細胞には、四十億年の進化の歴史が刻まれています。
死は、生物が未来へ向けて進化し向上していくためのバトンのようなものなのです。