照心洗心録

安岡正篤、中村天風などから学んだことをまとめています。

31. 病気を克服する

「病は忘れることによって治る」
中村天風

 

もし、現代になって急増しているうつ病神経症になってしまったら、どう克服すればいいでしょうか。

孫子の兵法に「相手と自分のことを知れば、百戦しても危険はない」とあるように、まずは病気について理解することが重要です。

相手のことを知らなければ、作戦や対策を立てることができないので、行き当たりばったりになってしまいます。

 

うつ病神経症を患うと、自律神経が乱れてしまいます。

なので、まずは自律神経を安定させることが重要になります。

そのためには、規則正しい生活を送り、過度なストレスを避けなければなりません。

栄養のバランスを考えて食事をとり、お風呂は血流を良くするため、ゆっくりと湯船に浸かりましょう。

人間は体温が下がるときに、副交感神経が働いて眠りにつきやすくなるので、寝る前にお風呂に入りしょう。

また、ストレスが溜まったときのために、それを発散できる方法をいくつか持っておきましょう。

運動や散歩などのできるだけ体に良いものから行うようにして、それでも駄目なら段々と価値の低いものに下げていくようにします。

暴飲暴食などの体に負荷がかかるものは最後の手段に取っておきましょう。

 

人間には自我があります。

なので思考をすると、どうしても主観が入ってしまい、実際の現実とは違う思い込みや、認識のズレが生じてしまいます。

なので、自分のことを客観的に考えることが大事です。

例えば、考え方は偏っていないか、自分の長所と短所は何なのか、どのような癖を持っているかなど、自分の特徴について考えてみましょう。

自分の特徴を知っているほうが、容易に自分を変えることができます。

 

自分のことを知るためには、他人のことを知ることも重要になります。

他人と比較すれば、より正しく自分を理解できるからです。

人類の歴史をみてみれば、さまざまなタイプの人間がいることがわかります。
例えば、織田信長のように常識にとらわれず合理的に行動するタイプや、豊臣秀吉のように積極的に何にでも挑戦するタイプ、徳川家康のように、忍耐強く気長に物事を考えられるタイプなどがいます。

戦国時代や幕末は、季節でいえば停滞した冬から新しい春へと変わる変革の時期なので、魅力のある人物がたくさん登場します。

歴史上の人物と自分を比較して、自分がどのようなタイプなのか考えてみましょう。

 

うつ病神経症の一番の原因はストレスなので、それらを患った場合、何かしらの無理をしている可能性が高いです。

それは自分を見誤ることで、自分に合った生き方をしていないせいかもしれません。

歴史上の自分と同じようなタイプの人物が、どのような状況で成功や失敗をしているのかをみてみましょう。

そうすれば、自分の生き方を見直すことができます。

現代で起こっている問題は、過去にすでに起きたがかたちを変えているにすぎません。

どんな問題もそれを解くヒントは歴史の中にあるのです。

 

病気は、意識すればするほど悪化していきます。

なので、最も大切なことは、病気について考えないことです。

消極的な考えにとらわれていると、病気はさらにひどくなっていきます。

病気について考えることをやめれば、ただの体の異常になるので、あとは宇宙に任せておけば、勝手に治っていきます。

転んで擦り傷ができても、放っておけば治りますよね。

 

すぐに消極的なことを考えてしまうのは、無意識の中に不要な本能心が残っていることが原因です。

恐怖、怒り、不安などは本能心から生まれる感情です。

幼い頃に経験した恐怖体験などが、不要な本能心として心の奥底に残っているので、すぐにそのような感情が湧いてきてしまいます。

かつての弱肉強食の世界では、恐怖や不安は外敵から逃げるために役立つものでしたが、現代社会では不要なものになってしまいました。

仕事中にストレスを感じても、そこから逃げ出すことはできませんよね。

だから、これらの不要な本能心を、心の奥底から消していかなくてはなりません。

そのためには、日々積極的な心を持つことよって、それらを少しずつ薄めていくことしかありません。

 

体に病が生じると、それが気になって消極的になりがちですが、実はチャンスにすることもできます。

宇宙法則に反したときに、体に破壊の作用が起こり、病が生じるので、病は今の生活に何らかの問題があることを、宇宙が教えてくれているのです。

だから、病は自分を更生するチャンスになります。

病になるということは、道から外れているということであり、宇宙法則に背けば、健康か運命に何らかの問題があらわれてきます。

 

積極的な心を持てば、宇宙霊と同調して生きることができます。

そして積極的な心をつくるためには、真理を学んでそれを実践し、自分自身を叩き直していくしかありません。

結局のところ、すべてはそこに尽きます。

病気を克服するのも、徳を積むことも、悟りを開くことも、造化と共に生きることも、真理の中で生きることもすべて同じことなのです。

自然のままに即座に応じていくことを本然即応といいます。