照心洗心録

安岡正篤、中村天風などから学んだことをまとめています。

37.潜在意識の積極化

「筆を洗ったまっ黒なコップの水も、水道の蛇口のところに置いて、ポタリポタリと水を落とせば、一晩のうちにきれいになってしまう」
中村天風

 

私たちが普段の生活の中で認識している顕在意識は、意識全体から考えると氷山の一角でしかありません。

顕在意識の下には、人間が自覚していない潜在意識が広がっています。

すぐに消極的な思考をしたり、イライラしたりするのは、潜在意識の奥底に不要な自我が残っているからです。

それによって、恐怖や欲求不満などが生まれ、それが雑念や妄想になって意識の上にあらわれてきます。

顕在意識は自覚できるので、消去的な思考に気づくのは容易ですが、潜在意識は自覚できないので、そう簡単に改めることができません。

今回は、潜在意識に残った不要な自我を消していく方法を紹介します。

 

顕在意識と潜在意識はもともと一つの意識なので、もちろん繋がっています。

だから、顕在意識を積極的に保てば、それが少しずつ潜在意識に伝わるので、潜在意識は積極的になっていきます。

なので普段から、「怒らず、恐れず、悲しまず」と「正直、親切、愉快」を心がけて、積極的でいるようにしましょう。

また潜在意識は、自分の発する言葉に少しずつ同化していきます。

だから、日頃から積極的な言葉を口はして、消極的な言葉を口にしないように気をつけましょう。

バケツいっぱいの泥水でも、水道水を注ぎ続ければ、少しずつ綺麗になっていきます。

同じように、消極的な観念で濁った潜在意識も、積極的な観念を注ぎ続ければ、いずれは積極的になるのです。

潜在意識が掃除されるのには時間がかかるので、根気強く、少しずつ不要な自我を取り除いていきましょう。

 

受け入れることができないほどのショックな出来事が起こると、通常の記憶にはならず、潜在意識に強く残ってしまうことがあります。

それをトラウマといいます。

トラウマは普段は潜在意識の中に隠れていますが、ふとしたきっかけで突然顔を出します。

トラウマを克服するためには、まずは自分にトラウマがあることを認めて、それを少しずつ受け入れて、通常の記憶になるのを待つしかありません。

苦手教科を見て見ぬふりを続けていれば、苦手意識が強くなっていくだけです。

トラウマも見て見ぬふりを続けていれば、余計に心の奥底に根を張っていきます。

だから、トラウマの存在を認め、心を積極的に保つことで、少しずつ受け入れていきましょう。

トラウマも潜在意識に残る不要な自我の一つなのです。

 

幼い頃は、物理的な身の危険を感じない限り、恐怖を感じません。

しかし歳をとると、人を待たせたるだけで焦りを感じるようになります。

怒りも焦りも不安も、本を正せばすべて恐怖から生まれます。

自分の身を守るために恐怖を感じ、それが他の感情に変わっていったのです。

人を待たせているから焦っても、いいことはありません。

焦らずに冷静になったほうが、結局人を待たせずにすみます。

生まれたての赤ん坊のような、不要な自我のない潜在意識を目指しましょう。

幼い頃に感じた恐怖は、潜在意識に強く残ります。

なので、親は子どもを怒るのはいいですが、強い恐怖を与えるのは避けるべきです。

 

人間は暗示に同化していくので、それを利用して、潜在意識を掃除する方法があります。

自分に暗示をかけて良い方へ誘導していく、自己暗示誘導法です。

少年漫画の主人公のように、「おれは○○だ」と心の中で宣言を続ければ、それを現実化するように、知らぬ間に行動が変わっていきます。

その過程で、潜在意識も少しずつ積極的になり、その宣言を紛れもない真実だと思えるようになったとき、それは信念となっています。

無理にでも何かのふりをしていたら、脳は勘違いして少しずつそれに近づいていくのです。
言葉やイメージは、潜在意識を変化させていく力があります。

 

人間の想像力はすさまじいものです。

私たちの周りにある物は、ほぼ人間の想像力から生まれた物です。

もちろん植物などの自然は違いますが、それ以外は人間の頭で想像したものが、具現化されています。

頭の中ではっきりと映像にして想像できれば、それは現実世界にあらわれてきます。

想像した映像が紛れもない真実だと思えれば、宇宙の創造の力が働きだし、実際にその通りに現実が動いていくのです。

もちろん、物理的に不可能なものは現実化しません。

それは想像ではなく妄想です。

 

心とは気の動きのことで、宇宙も心を働かせてこの世界を創ったのです。

この宇宙の創造する力を働かせることができるから、人間は万物の霊長といわれるのです。

 

物理的に可能なものならば、人間の想像は具現化します。

不思議に思うかもしれませんが、それが宇宙法則なのです。

それは自分のことでも同じなので、自分の将来の姿は理想的なものをはっきりと思い描くようにしましょう。

注意すべきことは、想像はプラスにもマイナスにも働くということです。

宇宙法則は情けをかけてくれません。

消極的な想像を続ければ、現実はそのようになっていきます。

 

創造の力を働かせるためには、気を集中して使わなければなりません。

人間は希望を思い浮かべるときは、雑念が生じやすいですが、ショックな出来事があって、消極的な思考をするときは気を集中して使います。

だから、悪い予感が的中し、負の連鎖が起こってしまうのです。

しかし、大きな事柄が現実化するには時間がかかります。

だから、消極的な想像が現実化する前に、積極的な想像に振り替えるようにしましょう。

すぐに現実化しないことは、実はありがたいことなのです。

本当に叶えたい理想だけを、気を集中して持ち続けるようにしましょう。

 

寝る前に、鏡に映った自分に向かって「お前は○○になる」と命令して、自己暗示をかけるのも効果的です。

眠りに入るときは、半覚醒状態の変性意識になります。

変性意識になると、顕在意識と潜在意識の境が曖昧になって、お互いを行き来しやすくなります。

だから、寝る前に消極的な思考をすることは絶対にやめましょう。

寝るときくらいは、真珠を薄い絹で包むような気持ちで心を大切に扱って、無理にでも尊い気持ちになりましょう。

一日中そんな気持ちでいることは大変ですが、寝る前だけなら可能なはずです。

寝るときに消極的な思考をすることが、潜在意識を最も汚すことになります。

 

ちなみに、瞑想で目指す無念無想の境地も変性意識になります。

安定した精神状態で深い瞑想に入ると、変性意識を通して、潜在意識が掃除されていきます。

 

睡眠は、生物が脳を休ませて、体の疲れを取るための大事な時間です。

顕在意識が汚れたままで眠りにつけば、その汚れが潜在意識の中に入っていってしまいます。

それでは霊性心が十分に働かないので、自己治癒力が発揮されず、疲れが残ってしまうのです。

毎日のことなので、忘れてしまいがちですが、睡眠は神聖な時間です。

今日も安心して布団で眠れることに、感謝を持って眠りにつきましょう。

 

朝起きたら、自分に「おれは〇〇になる」という断定をしましょう。

また寝る前には、鏡の中の自分に「お前は〇〇になる」と命令しましょう。

そして布団に入ったら、眠りにつくまで積極的な心持ちでいましょう。

その三つを習慣にして、消極的な感情を生む観念要素を更改していきましょう。

自分にかける言葉は何でもいいので、「おれは信念強いぞ」とか「お前は楽しく生きろ」とか、自己暗示によって現実化していきましょう。

 

霊魂は宇宙霊と繋がっていて、顕在意識は潜在意識と繋がっています。

だから、潜在意識は宇宙霊の一部と重なっています。

顕在意識は霊魂のものですが、潜在意識は霊魂と宇宙霊にまたがって存在しているのです。

霊性心を発揮すると、潜在意識が活発になるので、宇宙霊の力が霊魂に入ってきます。

すると、自分の中に眠っている普段は使っていない力が発揮されます。

それが、火事場の馬鹿力や潜勢力と呼ばれるものです。

なるべく普段から霊性心を発揮し、潜在意識を活用して生きられるようになりましょう。