照心洗心録

安岡正篤、中村天風などから学んだことをまとめています。

35.安定打坐法

「実際の感情、情念を心の中に入れないで、純真な気持ちになるのが無念無想なんです」

中村天風

 

お坊さんが坐禅を組んで瞑想をするのは、無念無想である三昧の境地に達するためです。

瞑想は想いを瞑ると書くように、雑念を消すために行います。

本能心と理性心から生まれる雑念を消し去ることができれば、自ずと霊性心があらわれます。

霊性心は宇宙の心の一部であり、この世界の造物主の心の一部です。

だから、霊性心を発揮できれば、造物主と人が結びつく神人冥合が行われます。

すると、心の中にぐんぐん宇宙のエネルギーが入り込んできて、普段は使うことのできない潜勢力が発揮されます。

そしてこの状態こそが、人間の本来あるべき姿なのです。

心に雑念があると、脳が働き続けるので、どんどん疲れていきます。

それは、誰もいない部屋でエアコンをガンガンかけるようなもので、エネルギーの浪費をしていることになります。

逆に霊性心が発揮されると、エネルギーが充電されていくのです。

 

禅の修行で目指している状態は、他のことに気を取られず、ひたすら一つのことに気を集中できるようになる一意専心です。

口で言うのは簡単ですが、実際に行うのは大変です。

ご飯を食べるときも、なんとなしに仕事のことなど、別のことを考えたりしていませんか。

ご飯を食べるときは、ご飯を食べることだけに精神を集中する。

寝るときは、寝ること以外考えない。

それが一意専心です。

「眠れない」と思った時点で、それは雑念が発生しているのです。

人間は少しでも油断すると、何か別のことを考えてしまいます。

禅のお坊さんは、常に一意専心の状態でいられるように修行しているのです。

気を集中して打ち込むと、自分の能力が最大限に発揮されるので、何をするにしても効率が上がります。

逆に雑念を浮かべていると、力が発揮できないので効率が落ちます。

 

雑念を浮かべることは、百害あって一利なしです。

エネルギーが浪費されて疲れが溜まっていくし、消極的な思考や欲求不満などが暴走する原因になります。

自分が考えようと思ったこと以外は考えないように努めて、雑念が浮かんだらすぐに消すようにしましょう。

 

中村天風の考案した雑念を消して心をリセットするブザー音を使った瞑想、安定打坐法を紹介します。

簡単にできるので、朝起きた時や寝る前などに行い、それを習慣化しましょう。
まず静かな場所で、楽な姿勢で座り、目をつむります。

そして、自動的に音の切れるブザー音を十数秒鳴らします。

アップルストアに天風会の安定打坐法というアプリがあるので、アイフォンを使っているならおすすめです。

ブザー音が鳴り始めると、意識が自然とブザー音に集中します。

そして、ふいにブザー音が消えると、意識は行き場を失って、心の中が空になります。

このときに体験するのが、無念無想である三昧の境地です。

このときの心持ちを覚えて、日常の中で雑念が浮かんできたら、できるだけその心持ちを思い出しましょう。

それを続けていれば、ブザー音がなくても無念無想の境地に入ることができるようになります。
本来なら、無念無想になるためには、何時間も坐禅して、本能心と理性心が消えるのを待たなくてはなりませんでした。

しかし安定打座法では、ブザー音ひとつで簡単に無念無想になることができます。

 

ここで重要なのは、継続することです。

この方法では、簡単に無念無想になれるので、その有り難みを忘れてしまいがちです。

人は苦労して手に入れたものは、手放さないように努力します。

しかし、簡単に手に入ったものは、簡単に手放してしまうので、継続するように気をつけましょう。

 

無念無想の状態で生きれば、意識を使わないですむので、疲れにくくなります。

さらに、本能心と理性心の板挟みになって、煩悶することがなくなります。
もちろん怒りや悲しみを、感じることはありますが、無念無想になって、心をリセットできれば、執着することがなくなります。
安定打座法を続け、無念無想になる時間を少しずつ増やしていけば、ブザー音がなくても無念無想の境地に入ることができるようになります。

消極的な気持ちにとらわれたら、フッと無念無想の境地に入り、心機転換できるように安定打座法を続けていきましょう。

 

おすすめ書籍

中村天風「盛大な人生」