照心洗心録

安岡正篤、中村天風などから学んだことをまとめています。

43.脳波と意識

「人間は自分のコンプレックスを除去しようとつとめるべきではなく、それと調和を保つようにつとめるべきです」
ジークムント・フロイト

 

脳波と意識は深い関係があり、周波数の低い順から、デルタ派、シータ波、アルファ波、ベータ波、ガンマ波があります。

アルファ波より周波数が低いものを徐波と呼び、シータ波とデルタ波がそれにあたります。

通常成人が覚醒している時は、ベータ波と呼ばれる脳波が発生しています。

そして、リラックスしているときはアルファ波が発生し、浅い眠りのときはシータ波、深い眠りの時はデルタ波と呼ばれる脳波が発生します。

また、リラックスしている時だけでなく、目を閉じるだけでも、アルファ波が発生することがわかっています。

つまり目を閉じるだけで、脳への情報がある程度遮断されるので、脳がリラックスするのです。

頭が混乱していると思ったら、脳をリラックスさせるために、うまく時間をとって、一分間目を瞑るようにしましょう。

また、昼間に仮眠を少しとるだけで、脳のパフォーマンスがかなり回復することもわかっています。

しかし、仮眠を三十分以上とると、起きたあとに眠気が続き、本来のパフォーマンスが発揮できる状態になるまで時間がかかってしまいます。

なので、仮眠は三十分以内にしましょう。

 

浅い眠りのことをレム睡眠といい、レム睡眠は脳の整理をするために必要な時間になります。

レム睡眠の間、実はまぶたの下で眼球が高速で動いています。

ショックなことがあったときに、視線を左右にすばやく動かすと、脳がその事実を受け入れるスピードが早くなるといわれています。

その理由は、右脳と左脳が同調して、脳がよく働くからだそうです。

嘘をつくときや、動揺したときに、人の視線が激しく動くのも、脳を落ち着けようとしているのかもしれませんね。

視界の左側は右脳、右側は左脳につながっていて、左脳の働きは論理的、右脳の働きは創造的といわれています。

なので、左側を見ながら話す人は、嘘をついている可能性が高いなどともいわれています。

左右を交互に見ると脳がよく働くなら、貧乏ゆすりをするときは、左右交互に足を動かすといいかもしれませんね。

 

夢を見るのはレム睡眠のときで、夢を見ているとき、脳は記憶の整理をしているといわれています。

夢は脳を整理する過程で、潜在意識から生じたイメージの映像なのです。

レム睡眠のときの脳波はシータ波であり、深い瞑想状態のときも、アルファ波の中にシータ波が増えてきます。

深い瞑想状態になると、覚醒している状態と無意識の状態の中間である、変性意識と呼ばれる状態になります。

この状態になると、潜在意識の中に顕在意識が入り込みやすくなり、潜在意識が顕在意識に現れてきやすくなります。

潜在意識と顕在意識の境界線が薄くなるのです。

変性意識をわかりやすくいうと、体は眠って、心は起きている半覚醒状態です。

安定した精神状態で瞑想を行い、変性意識の状態になれば、潜在意識のとらわれや恐怖が消えていきやすくなります。

 

意図的に変性意識の状態に持っていく方法に、ヘミシンクと呼ばれるものがあります。

ヘミシンクは、ヘッドフォンで左右の耳に違う波長の音を流し、その波長の差によって、左右の脳を同調させ、意識を変性意識の状態へと持っていくのです。

音声ガイダンスに従って、頭の中にイメージを浮かべながら、変性意識の状態に入っていきます。
瞑想は思考を停止することによって変性意識状態になりますが、ヘミシンクは逆に想像力を働かせることで、変性意識状態になるのです。
ある程度瞑想をやってみて、行き詰まりを感じたら、ヘミシンクをやってみるのもいいかもしれません。

瞑想を違う目線からとらえる、良い機会になるかもしれません。

他にも、変性意識状態は、極限まで追い込まれたときや、覚醒剤などを使用したときなどでもあらわれます。

 

急速眼球運動を伴わない深い睡眠をノンレム睡眠、または徐波睡眠と呼びます。

レム睡眠のときは、大脳皮質が強く活動していますが、ノンレム睡眠のときは、脳が休息状態に入ります。

なので、夢をみることもないといわれています。

ぐっすり眠らなければ、体は休むことができても、脳は休むことができないのです。

 

人間の意識は、さまざまなところに移動し、それを映し出します。

テレビのチャンネルを変えることで、番組が変わることに似ているかもしれません。

体のどこかが痛むときは、その部分に意識が集中しているし、運転しているときは、視界が意識を占領しています。

雑念が浮かんでいるときは、意識のうちの何割かが、どうでもいいことを映し出しているのです。

雑念はテレビでいうと、ノイズのようなものです。

眠ることは、テレビの電源を消すことに似ていますね。


注意力が散漫な人は、意識が映し出す対象が、知らぬ間に変わってしまいます。

飛んできたボールをキャッチするには、意識をボールに集中し、グローブに入る瞬間まで、ボールから意識を離してはいけません。

ボールにあった意識を、キャッチする前に他の場所へ移してしまえば、ボールはキャッチできません。

注意力が散漫な人は、最後までボールに意識を集中させることができないのです。

もちろん、普段からキャッチボールをしていれば、無意識でもボールをキャッチできるようになります。


注意力が散漫には、煙草を吸うことが有用だそうです。

ニコチンには心を落ち着ける作用がありますが、それ以外にも、煙草を吸って一息おくという行為にも、意味があるのかもしれません。

 

自然界にはパニック状態の人間のように、極端な動きをするものは、ほとんどありません。

自然界のものは、緩やかに曲線を描くように動いていきます。

人間も、その自然の流れから離れないことが大切です。

危険を感じた動物も、ビクッとすばやい動きをするのは一瞬だけです。

機械化の進んだ現代社会に無理に対応しようとすると、脳はついていけずに、不調をきたしてしまいます。

 

潜在意識を掃除していくうえで大切なのは、リラックスして心を開いた状態で、恐怖を感じた出来事を少しずつ受け入れていくことです。

そうすることで、その記憶を通常の記憶と同じ場所に移していくことができます。

そのためには、記憶の中で捻じ曲げてしまった事実を、ありのままに見つめ直すことが求められます。

 

広場恐怖症といって、特定の場所に強い恐怖や不安を感じてしまい、日常生活に支障をきたしてしまう病気があります。

例えば、電車やバスに乗れなくなってしまうのです。

しかし、電車やバスに乗ることで、命に危険が及ぶことはありません。

その間違った認識を塗り替えるには、実際に電車に乗って認識を変えるしかないのです。

頭の中でいくら予行練習をしても、想像と現実は異なります。

心の奥底にある避けているものと向き合うことが、現実とのズレを解消して、本当の自分に向かっていくためには必要なのです。

何かを経験すれば、それに対して感情が生まれ、その感情に何らかの判断をします。

そして、それを積み重ねていくうちに、自我がつくられていきます。

例えば、幼い頃に人前で発表して、笑われて恥ずかしい経験をしたので、人前で話すことは恐怖と判断したとします。

するとその経験は、心の傷となって潜在意識に残ってしまうのです。

実際は人前で話すことは怖いことではなく、笑われることによって、身に危険が及ぶことはありません。
生きているうちに、さまざまな経験と判断が積み上げられて、現実とズレのある自我がつくられていきます。

だから、人間が見ている世界は、自我というフィルターを通して見ている世界であり、一人ひとり見ている世界は違うのです。

人間が見ている世界は、物理的な現実の世界とは違うことを覚えておきましょう。

 

地球を一つの生命体と考えれば、すべての生物の意識がどこかで繋がっていても、おかしくはありません。

地球上の島をそれぞれの意識と考えれば、海底を通して、島はすべて繋がっているように、それぞれの意識は、集合意識によって繋がっているかもしれません。

人が無意識のうちに他人を助けるのは、集合意識で繋がっているためとも考えられます。

しかし、人間に自我が芽生えると、本能心がそれを邪魔をしてしまうのです。


心の世界は人それぞれ違いますが、意識の奥底にある集合意識は、皆同じなのかもしれません。

そこが宇宙霊であり、陽明学でいう良知であり、仏教でいう涅槃であり、道教でいうタオなのかもしれません。

道教では、万物の根源とその法則をタオと呼びます。
瞑想によって、変性意識状態に達するためには、観測する自分を、さらに観測する目線があれば、上手くいきやすいといわれています。

それは、自分の霊魂をみる宇宙霊の目線といえるかもしれませんね。